後三年の役を題材にした小説「炎立つ」四巻を読んだ感想

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「炎立つ」の四巻を読みました。

前九年の役のパートは一巻から三巻の3冊だったのに対して、後三年のパートは四巻の1冊のみです。

前九年の役は実際には12年かかったから、時間の比率で言えば4冊に対して1冊でもいいのですが、読んだ感想は、前九年のパートに比べて、ずいぶん中身が凝縮されているなあという感じがします。

後三年の役の間に起こった出来事はかなり多いし、主要な人物の人間関係は複雑で、年数で比較すれば短くても、内容的にはかなりボリュームがあります。
前九年の役の場合は、間に間延びした平和な期間も何度かあったのに対して、後三年の役の場合は、そういう期間があまりなかったので、密度も濃いです。

内容的には2冊くらいでちょうどいいと思いますが、1冊になったのは、大河ドラマの原作として書いていたのに、執筆が進まずにドラマの進行に間に合わなかったという事情があるのかもしれません。

本当ならもっと長編になったのかもしれないと思うと、もったいない気がしますが、反面、スピード感があって面白かったです。

この巻の主人公の清原清衡は、藤原経清の子供ですが、置かれた環境は全く異なります。
藤原経清は、安倍頼時の娘を妻にしていたとはいえ、自身は蝦夷でもなく、安倍氏側につかなければいけない義務はありませんでした。
むしろ正当な立場としては朝廷側の人間です。
なのでキャスティングボートを握る部外者のキーマンみたいな感じもあって、ある種の痛快感がありました。

しかし清衡は、完全に清原氏内部の人間で、しかも清原氏と直接の血のつながりがないという立場です。
ちょっと間違うと自分がスケープゴートにされてもおかしくないような立場で、常に周り中が油断のできない窒息しそうな状況の中にいます。
どこにも逃げ場がない中、忍耐と冷静な状況判断と己の力量だけを頼りに、目まぐるしく展開していく状況の中で有利なポジションを確保し、最後まで生き残ることによって勝者になりました。

経清は負けて首をはねられてもなお、源頼義を罵倒して死んでいくという爽快感がありました。
清衡は最後に生き残って奥州藤原氏の始祖になったにもかかわらず、妻も子も殺されて一人生き残った悲壮感が残ります。

ものすごく好対照な二人ですが、大きな流れから見ると、父の仇を子が討った話になり、見事にまとまります。

しかし、この作品は五巻まであり、五巻は100年後に奥州藤原氏が源頼朝に滅ぼされる話です。
まだ読んでませんが、どうして後三年の役で終わらせないのかなと思いました。

欧州藤原氏が源氏に滅ぼされるということは、四巻までの主人公である藤原親子から見れば、元の木阿弥になったというようなことです。
まあ、歴史の壮大な流れからいえば、因果応報の末にそこまでで奥州藤原氏の起こりから終わりまでを完結したということなのですが、そこまで描くならば、やはり分量のバランスが悪すぎるような気がします。

これもやはり、大河ドラマの原作として書きはじめたのに途中から間に合わなくなったということでそうなってしまったのかもしれません。
かなり面白い小説だけに、そのあたりが少し残念ですね。

ただ、小説としては、四巻の終わり方は全く続きがあるような雰囲気もなく完結しているので、ここで読むのをやめても全く問題ない感じになっています。
ですので、五巻は別物として、他の小説を挟んでから、時間を置いて読もうと思っています。

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