杉本苑子さんの功績に感謝

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歴史小説作家の杉本苑子さんが亡くなりました。

91歳というから大往生ですが、やはり残念です。

杉本さんの小説を、最近何冊か読ませていただきました。

初めて知ったのは3年くらい前で、杉本さんが小説を書かなくなってから何年も経っています。

私はキチンと勉強したことがないので一般常識がなく、5年前には藤原鎌足さえ知りませんでした。

そんな私にも子供ができてしまったため、せめて日本の歴史くらいは一通り勉強しておかないと将来子供に対して恥ずかしいと思い、中公文庫の「日本の歴史」をAmazonで購入して読み始めました。

しかし、まったく素養がないため、内容がなかなか頭に入って来ず、苦痛でした。

私は小説は好きなので、歴史小説なら頭に入って来るかもしれないと思いました。
少しくらい史実と違ってフィクションが入っていても、大筋が分かればいいやと思って歴史小説を探してみました。

ただ、戦国時代や幕末の頃の歴史小説ならあることを知っていましたが、古代の歴史小説があるかどうかわかりませんでした。

探してみると、さすがに縄文時代や弥生時代の小説はほとんどありませんでしたが、飛鳥時代の小説はけっこう見つけることができました。

ただし、そのほとんどが、黒岩重吾さんの書いたものでした。

彼の「聖徳太子」を最初に読みました。
大変おもしろく、初めて古代の人々を人間として感じることができました。

次に「鬼道の女王 卑弥呼」にさかのぼり、あとは時代順に、しらみつぶしに読んでいきました。

完全に黒岩史観かもしれませんが、とにかく飛鳥時代までの歴史の流れは、バッチリ頭に入りました。

黒岩重吾さんは2003年に亡くなっていますが、歴史小説は50代半ば以降の、比較的晩年になってから書き始めているんですよね。

彼がいなかったら、この時代の作品はかなり層が薄かったので、彼がいてくれたことに感謝しました。

奈良時代に入ると、黒岩重吾さんの小説は少なくなりますが、代わってその時代の作品を提供してくれたのが、杉本苑子さんと永井路子さんです。

特に杉本さんの「穢土荘厳」は、大仏様の開眼式をクライマックスに、奈良時代を壮大なスケールで書いた小説で、奈良時代という時代の理解に最適な小説でした。

最初、長屋王の変から物語が始まるのですが、長屋王の奥さんとの会話で、「もう歳なんだから無理しないでくださいな」的な、昭和のテレビドラマみたいなやりとりがあって、思わず笑ってしまった記憶があります。

でも、1500年前だって、穏やかな夫婦のひとときに、そんなような会話はあったに違いないよな、などと思いながら読んでいました。

平安中期を描いた「散華」、「檀林皇后私譜」、「山河寂寥」なども、おもしろく読ませてもらいました。

杉本さんや永井路子さんは、黒岩重吾さんと違って、広範な時代の小説を書いていますが、奈良時代から平安時代は、飛鳥時代ほどではないものの、歴史小説の層が薄いので、このふたりの功績は大きいと思います。

歴史の激動期や有名な人物は、吉川英治や山岡荘八などの巨頭たちが書き尽くしていますが、その隙間を丁寧に埋めるように、あまり有名でもない人物などにもスポットをあてて、作品にしています。

特に平安時代などは、まるで話し合いで担当を決めていたかのように、二人でかわりばんこに、平和な時代を丁寧に小説化していってもらったような印象です。

誰が書いてもドラマチックになる題材で書くよりも、地味に見える時代にもドラマがあったことを知らしめてくれたことの方が、賞賛されていいのではないでしょうか。

「日本の歴史」では全く印象に残らなかっただろう時代のできごとを、楽しく読ませてもらったことに感謝します。

 

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